大阪地方裁判所 昭和57年(ワ)4513号 判決 1983年3月23日
原告
高見昌至
被告
ハリヤ繊維株式会社
ほか一名
主文
1 被告らは、各自、原告に対し、一〇二三万二七〇七円およびうち九三三万二七〇七円については昭和五五年一〇月三日から、うち九〇万円については昭和五八年三月二四日から、各支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを二分し、その一を原告の、その余を被告らの負担とする。
4 この判決は、第一項にかぎり、仮に執行することができる。
事実
第一当事者双方の求めた裁判
一 原告
1 被告らは、各自原告に対し、金二三一一万三八四〇円およびうち金二一六一万三八四〇円について昭和五五年一〇月三日から、うち金一五〇万円について昭和五八年三月二四日から、各支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告らの負担とする。
3 仮執行の宣言
二 被告ら
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
第二請求原因
一 事故の発生
1 日時 昭和五四年五月二二日午後四時一〇分頃(天候晴)
2 場所 大阪府門真市上島町三〇番二三号先
3 加害車 普通貨物自動車(大阪四五は六二一二号)
右運転者 被告川島
4 事故の態様 前記日時場所において、原告が東から西に向け幅員約六メートルの道路を横断中、被告川島の加害車に跳ねられた。
二 責任原因
1 運行供用者責任(自賠法三条)
被告ハリヤ繊維株式会社(以下「被告会社」という。)は、加害車を所有し、これを自己のために運行の用に供していた。
2 不法行為責任(民法七〇九条)
被告川島は、前方不注視、ハンドル・ブレーキ操作不適当の過失により、本件事故を発生させた。
三 原告が受けた傷害、治療経過、後遺症
1 原告は、本件事故により、頭部外傷(Ⅰ型后頭骨線状骨折)、左鎖骨々折、右尿管挫滅切断、上方結腸漿膜剥離、頭部顔面左手腰部左臀部左前腕両膝関節部挫傷兼挫創の傷害を受け、門真市大字岸和田一三六の一所在安井病院に、事故日である昭和五四年五月二二日から同年七月一八日まで五八日間入院し、さらに同月一九日から昭和五五年九月三〇日までの間、五九日間通院治療した。
2 原告は、本件事故当時六歳であつたが、右傷害により右腎臓の摘出手術を受け、また中腹部に右旁腹直筋切開の瘢痕(長さ約一四センチ)が残り、昭和五五年九月三〇日症状固定して後遺障害別等級表八級の後遺症が残存した。
四 損害
1 治療費 一九六万九二八〇円
2 付添看護料 一〇八万三〇〇〇円
内訳 入院中 三五〇〇円×五八日=二〇万三〇〇〇円
自宅療養 二〇〇〇円×四四〇日=八八万円
3 入院雑費 五万八〇〇〇円
一〇〇〇円×五八日=五万八〇〇〇円
4 通院交通費 六万一三六〇円
片道タクシー代五二〇円×二×五九回=六万一三六〇円
5 逸失利益 一一六三万六七六四円
原告は、事故当時六歳であつたところ、前記のとおり原告の後遺症は後遺障害別等級表第八級に該当するため一八歳から六七歳まで四九年間、その労働能力を四五パーセント喪失するものと認められるところ、一八歳の平均月収は一一万七二〇〇円であるから左記算式により一一六三万六七六四万円となる。
一一万七二〇〇円×一二×〇・四五×一八・三八七=一一六三万六七六四円
6 慰藉料 八七二万円
内訳 入通院分 二〇〇万円
後遺症 六七二万円
7 その他の損害 五万四七一六円
内訳
(一) 交通事故証明書交付料 五〇〇円
(二) 診断書交付料 一〇〇〇円
(三) 後遺症診断書交付料 二〇〇〇円
(四) 院長への謝礼 一万〇〇〇〇円
(五) 看護婦への謝礼 二万九〇〇〇円
(六) 医療費立替 三〇六〇円
昭和五五年九月一二日から同五五年九月三〇日の間七日間鎖骨治療
(七) 精密検査料(大阪市立小児保健センター) 三七〇五円
(八) 精密検査料(阪大病院) 五四五一円
(九) 右(一)ないし(八)の合計額 五万四七一六円
8 弁護士費用 一五〇万円
9 損益相殺 一九六万九二八〇円
治療費一九六万九二八〇円を被告らが支払つた。
五 結論
よつて、原告は、被告らに対し、本件事故に基づく損害賠償として二三一一万三八四〇円およびうち弁護士費用を除く二一六一万三八四〇円について本件事故発生の後である昭和五五年一〇月三日から、うち弁護士費用の一五〇万円について本件判決言渡の日の翌日である昭和五八年三月二四日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金の各自連帯支払を求める。
第三請求原因に対する答弁および抗弁
一 請求原因に対する認否
1 請求原因一の1ないし3は認める。同一の4は争う。
2 請求原因二の1は認めるが、同2は争う。
3 請求原因三の1、2は知らない。
4 請求原因四は知らない。
二 免責、無過失、過失相殺
被告川島は、本件事故発生につき、次にのべるとおり無過失であるから民法七〇九条の責任はないし、また加害車には構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたものであるから、被告会社も自賠法三条の責任がない。
1 本件事故発生場所は、車幅員六メートルのセンターラインの設置してあるアスフアルト道路で、自動車の制限速度が時速三〇キロメートルと制限されている。
2 被告川島は、加害車を運転し、時速約三〇キロメートルで南から北に向い進行中、自車の右側(東側)に自動車が駐車しており、その後方(北側)の車両の影から、東から西に向いかけ足で横断している原告を、自車の右(東)前方四・八メートルの地点で発見し、直ちに制動措置をとるも、同地点から五メートル進行した地点で原告と衝突したものである。
3 被告川島が、原告をはじめて発見できる地点は右駐車車両の影により右(東)前方四・八メートルのところであることが明らかであり、それ以前に原告を発見することが物理的に不可能であるから、同被告が原告を発見した地点については同被告に過失はない。
4 被告は、原告を発見して直ちに制動措置をとつたが時速三〇キロメートルではアスフアルト道路上でその制動距離が一〇メートルを超えることが明らかであり(時速二九キロメートル九・六メートル、同三二キロメートル一一・二メートル)、同被告が、原告を発見して、五メートルの地点で衝突しているものであるから制動不可能な地点で右衝突をしたことになり、この点においても同被告に過失はない。
5 右のように、被告川島には何らの過失もないから民法七〇九条の責任はない。そして加害車には構造上の欠陥、機能上の障害もないから被告会社には自賠法三条の責任がない。
6 仮に被告川島に何らかの過失が認められるとしても原告の過失が大きいから、相当な過失相殺が認められるべきである。
三 逸失利益について
1 幼児時の腎臓摘出は労働能力の喪失を招来しない。
すなわち一側の腎臓を失なつた場合は、歯、性器、醜状等の後遺障害と同じように労働能力を喪失させるものではない。
2 本件においても、原告は右腎臓摘出後、残存左腎機能に異常は認められていないから、将来労働能力が喪失するということはありえない。
第四被告川島の無過失の主張に対する原告の反論
一 前方不注視
被告川島が、前方を十分に注視していれば、原告の姿をもつとはやく発見でき、本件事故を回避し得た。
二 ハンドル、急制動の操作不適当
被告川島が原告を発見した地点から衝突した地点まで約五メートルの距離があるが、その間同被告はハンドルを直ちに左に切るとか急ブレーキをかけるとかの事故防止の措置を講ずべきところ、右措置はとられていなかつた。
三 速度違反
衝突地点から停車地点まで約一二メートルあるところ、これを逆算すると、被告川島が事故当時制限速度三〇キロを遵守せず、少くとも約三五キロメートル前後の速度で走行していた(12m=V2/100、V=34.64)ことは明らかであり、右速度違反も本件事故発生の一因をなしている。
第五証拠関係〔略〕
理由
第一事故の発生
一 請求原因一の1ないし3は当事者間に争いがない。
二 事故の態様について
成立に争いのない甲第一号証、乙第一ないし第三号証、原告法定代理人高見賀雄本人尋問の結果(以下「賀雄本人尋問の結果」という。)、被告川島本人尋問の結果(但し後記採用しない部分を除く。)に弁論の全趣旨を併わせると、次の事実が認められる。
1 道路状況
本件事故現場附近の道路(以下「本件道路」という。)は、南北に通じる、センターラインを境として、北行、南行各一車線のアスフアルト舗装された、平たんな歩車道の区別のない交通量の多い市街地の道路で、北行車線の幅員は二・九メートル、南行車線の幅員は三・一メートルであり、その道路状況は別紙図面記載のとおりである。なお、本件道路は最高速度毎時三〇キロメートルに制限されている。また本件事故当時路面は乾燥しており、そして南行車線の東側には別紙図面A表示のとおり車幅二・二メートルの自動車(ルート・バン)が駐車していた。
2 衝突状況
被告川島は、本件事故直前、加害車を運転し、北行車線を時速約三〇キロメートルで進行していたところ、別紙図面<1>の地点において、駐車車両の後方で、右斜め前方約四・八メートルの同図面<ア>地点に、本件道路を東西に横断しようとしている原告(昭和四七年六月六日生、事故当日六歳一一カ月)の姿を認め、危険を感じ、約五メートル進行した同図面<2>の地点においてハンドルを左に切り、急制動の措置を講じたが、約五〇センチメートル進行した地点において、加害車右前部が原告に衝突し、加害車は原告をその右前部でひきずりながら約一一・六五メートル進行した同図面<3>の地点で停止した。なお同図面表示のとおり右<3>点まで約六・五メートルのスリツプ痕がついた。
3 原告は、本件道路を横断するに際し、右方の安全確認をしていなかつた。
以上1ないし3の事実が認められ、被告川島本人尋問の結果中、右認定に抵触する部分は前掲各証拠と対比照合するとき、措信し難く、他にも右認定に反する証拠はない。
第二責任原因
一 被告会社について
被告会社が、加害車を所有し、これを自己のために運行の用に供していたことは当事者間に争いがない。しかして被告会社は免責の主張をしているが、後記二のとおり、被告川島に本件事故発生につき過失が認められるので、その余の点を判断するまでもなく、右免責の主張は失当である。してみると被告会社は自賠法三条により原告に対し、後記損害を賠償する責任がある。
二 被告川島について
前記第二認定の事実によれば、本件道路は片側一車線で、幅員も北行車線は二・九メートル、南行車線は三・一メートルであり、両側には商店、人家が密接し、しかも南行車線には自動車が駐車していたのであるから、時間帯(五月二二日午後四時一〇分頃)からして、このような場合右駐車中の自動車の後方から本件道路を東西に横断しようとする人があることは容易に予測できるものであるところ、駐車中の自動車の後方は見とおしがよくないから、自動車運転者としては前方ことに駐車中の自動車の後方すなわち右斜め前方を充分に注視するとともに事故の発生を未然に防止するため相当程度減速して進行すべき注意義務があるところ、別紙図面の駐車中の自動車の位置、右自動車の幅員、原告が横断しようとしていた方向、北行、南行各車道の幅員などに照らせば、被告川島が前方注視を充分にし適切な減速をしていれば、同図面の<1>地点よりもかなり手前で駐車中の後方で横断しようとしている原告を発見し急制動の措置を直ちに講ずるなど適切な措置をとることにより本件事故の発生を防止し得たものと認められるのに、同被告は、右注視を怠たつて漫然と減速することなく進行して<1>地点において同図面<ア>地点の横断しようとしている原告を発見したものであり、右の被告川島の原告を発見することが遅れたことおよび相当程度減速しなかつたことが本件事故発生の原因をなしていたことは明らかであるから、被告川島には本件事故発生につき過失があつたものというべくこれを否定する同被告の主張は失当である。
してみると、被告川島は民法七〇九条により、原告の後記損害を賠償する責任がある。
第三原告の受傷、治療経過、後遺症について
原本の存在および成立に争いのない甲第四ないし第三一号証、賀雄本人尋問の結果、同結果により真正に成立したものと認められる甲第三号証、第三四ないし第三九号証、第四二ないし第五〇号証に弁論の全趣旨を併わせると次の事実が認められる。
一 受傷、治療経過
原告は、本件事故直後、門真市大字岸和田一三六の一所在安井病院に運ばれ、頭部レントゲン撮影、賢孟撮影および開腹術の結果などから、頭部外傷(Ⅰ型、後頭骨線状骨折)、左鎖骨々折、右尿管挫滅切断、上行結腸漿膜剥離、頭部顔面左手腰部左臀部左前腕両膝関節部挫傷兼挫創の傷害を受けていることが判明し、事故日である昭和五四年五月二二日から同年七月一八日までの間五八日間入院し、右入院中右賢全摘除術などの手術、治療を受け、さらに同年七月一九日から同五五年九月三〇日までの間五九日通院治療を受けた。
その後大阪市立小児保険センターで、昭和五五年一〇月二二日から同年一一月一九日まで三回通院して検査を受け、また大阪大学医学部附属病院に同年一二月一六日から昭和五六年一月一三日までの間数回通院して検査を受けている。
二 後遺症
原告は、本件受傷により右腎を摘出し、中腹部に右旁腹直筋切開の瘢痕(長さ一四センチメートル)残存した。なお右腎臓摘出後残存した左腎臓の機能には全く異常が認められなかつた。
ところで原告の右腎臓摘出の後遺症は後遺障害別等級表第八級第一一号の「一側の腎臓を失なつたもの」に該当する。
第四損害
一 治療費 一九六万九二八〇円
前記甲第一七ないし第三一号証、賀雄本人尋問の結果によれば、原告の安井病院に対する治療費は一九六万九二八〇円であつたことが認められる。
二 付添看護料 二一万九〇〇〇円
1 入院付添費 一七万四〇〇〇円
原告は、前記第三認定のとおり安井病院に五八日入院したところ、前記甲第四ないし第七号証に賀雄本人尋問の結果と経験則によれば、原告は事故当時六歳一一カ月で小学一年生であり、入院期間中付添看護を要し、その間一日三〇〇〇円の割合による合計一七万四〇〇〇円の損害を受けたことが認められる。
2 自宅療養付添費 四万五〇〇〇円
原告は、自宅療養付添費として一日あたり二〇〇〇円の四四〇日分合計八八万円を請求している。
しかし賀雄本人尋問の結果、前記甲第八ないし第一一号証によれば、原告は昭和五四年七月一八日退院後、安井病院に通院する日を除いては小学校に通学していたこと、通院実日数は、同年七月一九日から同年八月三一日までは一三日、同年九月一日から同月三〇日までの間は八日、同年一〇月一日から同月三一日までの間は五日、同年一一月一日から同月三〇日までの間は五日であること、原告の母は主婦専業で勤めてはいなかつたことが認められ、これに前記認定のとおりの傷害の部位、程度、治療の内容等を考えると、原告は退院後三〇日間自宅療養につき付添看護を要し、その間一日一五〇〇円の割合による合計四万五〇〇〇円の損害を受けたものと認めるのが相当である。
三 入院雑費 五万八〇〇〇円
原告が五八日間入院したことは、前記のとおりであり、右入院期間中一日一〇〇〇円の割合による合計五万八〇〇〇円の入院雑費を要したことは、経験則上これを認めることができる。
四 通院交通費 六万一三六〇円
前記第三の一認定のとおり、原告は安井病院に合計五九日通院したところ、賀雄本人尋問の結果によれば原告の自宅から安井病院まで通院はタクシーを利用していたこと、右タクシー代は片道五二〇円であつたことが認められるから、原告は右通院のため合計六万一三六〇円の通院交通費を要したことが認められる。
五 逸失利益 七二九万七三四〇円
原告は、右腎臓を摘出したものであるから、後遺障害別等級表第八級第一二号にいう「一側の腎臓を失なつたもの」に該当するところ、同表によれば八級の労働能力喪失率は四五パーセントになつている。
ところで、原告は同表に基づき一八歳から六七歳まで四九年間、その労働能力を四五パーセント喪失するものと主張し、これに対し、被告らは原告の右腎臓摘出後も残存腎機能に異常が認められないことを理由として、原告において将来労働能力が喪失することはあり得ない旨反論している。
たしかに、腎臓一個を失なつても、残存腎臓の機能に異常がなければ、通常の社会生活を送ることができるので、その将来の労働能力が四五パーセント喪失するものとは単純には解し難いが、そうかといつて被告ら主張のように将来の労働能力の喪失を全面的に否定することにも左袒し難い。
惟うに、腎臓は本来二個あるべきところ、その一個を失なつたことにより、残存腎臓が外傷もしくは内科的疾患によりその機能を失なつたときには腎機能は全廃となり、透析療法か腎移植の療法によらざるを得なくなり、場合によつては生命を失なう危険性もあるところから、腎臓一個を摘出した児童は、残存腎臓の機能の推移には十分注意し、定期的な医師の検査を受ける必要があり、そして残存腎臓に負担をかけないよう留意し、これに外傷を受けないよう過激な運動や将来重労働の職種に従事することは差し控えることが望ましいものと推認され、してみると、原告としては右腎臓を失なつたことにより、将来職種の選択や労働内容について少なからざる制限や支障を受けることになるものと推測される。
以上のような諸事情を総合考慮すると、原告は、本件事故を原因として右腎臓を失なつたことにより、将来一八歳から六七歳まで、その労働能力を二五パーセント喪失するものと認めるのが相当である。
ところで、原告は事故当時六歳であり、昭和五六年度賃金センサス第一巻第一表、企業規模計、産業計、学歴計の一八歳ないし一九歳の男子労働者の平均給与額は一か年一五八万七五〇〇円であるから、その逸失利益を年別のホフマン式により年五分の割合による中間利息を控除して算定すると、左記算式により七二九万七三四〇円(円未満切捨て、以下同じ)となる。
〔一五八万七五〇〇円×〇・二五×(二七・六〇二-九・二一五)=七二九万七三四〇円〕
六 慰藉料 六五〇万円
本件事故の態様、原告の傷害の部位、程度、治療の経過、後遺障害の内容程度、その他諸般の事情を考えあわせると原告の慰藉料額は六五〇万円とするのが相当であると認められる。
七 その他の損害 計四万〇七一六円
1 交通事故証明書交付料 五〇〇円
原本の存在および成立に争いのない甲第一号証および弁論の全趣旨により、右証明書交付料として五〇〇円要したことが認められる。
2 診断書交付料 一〇〇〇円
賀雄本人尋問の結果、同結果により真正に成立したものと認められる甲第四〇号証によれば、原告側は昭和五四年六月七日安井病院に診断書交付料として一〇〇〇円支払つたことが認められる。
3 後遺症診断書交付料 二〇〇〇円
賀雄本人尋問の結果、同結果により真正に成立したものと認められる甲第四一号証によれば、原告側は昭和五五年一〇月六日安井病院に後遺症診断書交付料として二〇〇〇円を支払つたことが認められる。
4 院長への謝礼 一万円
賀雄本人尋問の結果、同結果により真正に成立したものと認められる甲第五一号証によれば、原告側は安井病院の院長に謝礼として金一万円の仕立券付のカツターシヤツを送つていることが認められるところ、右は原告の傷害の部位、程度、治療の経過に照らせば、本件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。
5 看護婦への謝礼 一万五〇〇〇円
賀雄本人尋問の結果、同結果により真正に成立したものと認められる甲第五二ないし第五七号証に弁論の全趣旨を併わせると、原告側は安井病院の看護婦等に合計二万九〇〇〇円のスポーツ・タオル等を送つたことが認められるところ、原告の傷害の部位、程度、治療の経過等に照らせば、右金員のうち金一万五〇〇〇円の範囲内において本件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当であり、その余は相当因果関係を欠く原告側の看護婦等に対する贈与的性格のもので本件事故による損害とは認め難い。
6 医療費立替 三〇六〇円
賀雄本人尋問の結果、同結果により真正に成立したものと認められる甲第三四ないし第三九号証によれば原告側は前記一の治療費のほかに安井病院に計三〇六〇円の医療費を支払つたことが認められる。
7 精密検査料(大阪市立小児保険センター) 三七〇五円
前記甲第四二ないし第四四号証、賀雄本人尋問の結果によれば、原告は大阪市立小児保険センターで脳の精密検査を受け、その検査料として計三七〇五円支払つたことが認められる。
8 精密検査料(阪大病院) 五四五一円
前記甲第四五ないし第五〇号証によれば、原告は阪大医学部付属病院で精密検査を受け、検査料として計五四五一円を支払つたことが認められる。
9 右1ないし8の合計額は四万〇七一六円となる。
八 右一ないし七の合計額は一六一四万五六九六円となる。
第五過失相殺
前記第一の二認定の事実によれば、本件事故の発生については、原告も駐車車両の後方から、本件道路の横断するに際しては左方の安全を確認してから横断すべきであるのに、右確認を怠たつて横断しようとした過失が認められるところ、前記認定の被告の過失の態様、原告の年齢、本件道路の状況その他諸般の事情を考慮すると、過失相殺として原告の損害の三割を減ずるのが相当と認められる。
してみると、右控除をすると、一一三〇万一九八七円となる。
第六損害の填補
前記第四の一の治療費一九六万九二八〇円は被告側が支払つたことは原告において自認するところであるのでこれを差引くと九三三万二七〇七円となる。
第七弁護士費用
本件事案の内容、審理経過、認容額等に照すと、原告が被告らに対して本件事故による損害として賠償を求め得る弁護士費用の額は九〇万円とするのが相当である。
第八結論
以上によれば、被告らは、各自、原告に対して一〇二三万二七〇七円およびうち弁護士費用を除く九三三万二七〇七円については本件不法行為の後である昭和五五年一〇月三日から、うち弁護士費用九〇万円については本判決言渡の日の翌日である昭和五八年三月二四日から、各支払済まで年五分の割合による遅延損害金を、それぞれ支払う義務があり、原告の本訴請求は右の限度で正当であるからこれを認容し、その余の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 本多恭一)
別紙図面
<省略>